Written by 雪乃丞.
ゼーレより直接送り込まれたフィフスチルドレンが、本部の保安部の人間よって殺害される。それは、ゼーレに対する明確な裏切り行為と取られても仕方ないことだった。しかし、シンジがショックの為に使い物にならない状態で、もう一人のエースパイロットであるトウジまでを失うわけにいかない司令部は、エスケープゴートを用意するしかなかった。
「異存はありません。全ては私のやったことです」
そう全ての責任を負うことを命令されたキョウコは、無表情のままに答えていた。
「惣流一尉。君には、ゼーレに対する憎しみがあった」
「そうです」
静まり返った部屋に、二人の声だけが響いていた。
「その復讐のために、ネルフに潜り込み、今まで虎視眈々と機会を伺っていた」
「その通りです」
自分を取り巻く、つい数時間前までの同僚達に視線すら合わせずに、キョウコは短く答えていた。
「犯行の理由は、フィフスの少年が、サードに対して暴行を働こうしたからであり、鈴原二尉は、それからサードを守ろうとしていたが、君は、これが復讐のまたとないチャンスだと思い、フィフスの少年を射殺した」
「すべて、その通りです」
手錠をはめられたまま、キョウコは微笑みさえ浮かべて見せていた。
「……それを見て、君が狂ったと判断した鈴原二尉は、サードを守るために君を射殺した」
「慈悲ですか?」
「そうとってもらって構わない」
そう副司令である冬月の言葉に問い返すキョウコに答えるのは、ネルフ司令でありシンジの父でもある碇ゲンドウだった。その答えに、キョウコは『お優しいことで』と口を歪めて答えていた。
「生きたままモルモットになりたいの?それとも、醜い老人達の慰み者にでもなってみたい?」
そう冷たい声で尋ねる金髪の女性に、キョウコはゆっくりとサングラスを外して見せた。そこに現れるのは、片目を抉り取られた傷跡の残る素顔だった。
「私の傷跡はコレだけではありません。……ご存知でしょう?」
「……ええ」
「それでも、こんな女に欲情できるというのなら、それはそれで興味がありますが?」
「……」
その傷跡がどれだけ酷い代物であるかを知る金髪の女性は、その言葉に何も答えなかった。
「ところで、司令」
「なんだ?」
「なぜ私に、慈悲を?」
「自白剤を使われるわけにはいかんからな」
「なるほど。納得出来ました」
その答えが区切りになったのであろうか。
一人の男が銃を懐から抜きながら歩み寄ってきた。
「最後に聞いておきたいのだが……」
「なんです?副司令?」
「君は何者だったのかね?」
「質問の意味が理解出来ないのですが」
「セカンドチルドレンの母親の名を語る君は、何処の誰かと聞いているのだよ」
「さあ?」
そう取り合わないキョウコの前に、黒服の男が立っていた。
「遺言はあるか?」
「特には何も」
黒服の男が手にしている銃は、あの時、トウジが手にしていた銃だった。
「……ああ、そういえば」
その何かを思い出したかのようなキョウコの言葉に、ゲンドウは黒服の動きを手で制した。
「なんだね?」
「最後に、少しだけ文句を言ってもよろしいですか?」
「かまわん」
「では」
そう答えたキョウコは、軽く息を吸ってから答えた。
「アンタたちってさぁ。自分達に、明るい未来があるなんて考えてない?」
吐き出されるのは嘲笑と侮蔑にまみれた言葉だった。
「そんなのあるはずないでしょーが。……この腐れマザコン野郎どもと、薄汚いビッチが!アンタたちには、部屋の隅でガタガタ震えながらなぶり殺されるのがお似合いだってぇの!キャハハハハハ!」
それを聞く、ゲンドウは歪んだ笑みを見せていた。
タァーン!
その銃声が響き渡った瞬間。
遠く離れた位置にあるはずの独房に拘束されていたトウジは、ゆっくりと行動を起こしていた。
「……阿呆が」
そんな呟きと共に。
その頬を流れる一筋の涙だけが、キョウコの死に手向けられた涙となっていた。
惣流キョウコ=ツェッペリン一尉が死んだ日。
ファーストチルドレン綾波レイもまた死亡していた。
表向きは使徒戦の中での怪我が原因だとされていたが、それが真実なはずがなかった。複数の予備のボディをもち、魂をそこに移せる存在であるレイが、そう簡単に死ねるはずがないのだ。だが、それでもレイは死んでいた。その原因となったのは、キョウコが仕掛けていた強力な爆発物によるものだった。
「……では、レイの病室に仕掛けられていた爆発物は……」
「はい。あの女が事前に仕掛けていたものと思われます。対外的には、ネルフに対するテロ行為による被害者として処理されることになると思います」
いくらレイにトウジと似た使徒の力があったとはいえ、就寝時間を狙ってベッドの裏側で爆発が起こったとあっては死を免れられるはずがなかったのだ。ましてや、病室が跡形もなく吹き飛ぶほどの威力の爆発物とあっては、偶然でも助かるはずがなかった。
「保安部や諜報部は、なにをしていた?」
思わず、そんな文句が漏れても仕方ない事態であろう。
「ほぼ同時刻に、地下のダミープラントも同様に破壊されたため、これによってファーストチルドレンの復活は不可能となりました」
「なんとかならんのかね?」
「そもそもの問題として、新たなボディーを用意できたとしても、そこに体を失って久しい魂が宿れるかどうかという疑問もありますし、第一に時間の猶予がありません」
「ゼーレの侵攻までには……」
「間に合わんな」
言うまでもなく、完全な死である。
無への回帰願望のあった少女にとっては、あるいは幸せなことだったのかも知れないが。
「フォースチルドレンは?」
「現在、保安部並びに諜報部が総力を上げて、所在を捜索中です」
「……足取りは?」
「未だ、不明のままです」
シンジは寝込んでおり、レイは死亡。アスカは相変わらず行方不明であるし、独房から逃亡したトウジに至っては足取りさえ知れないという。それは、八方手ふさがりといっても良い状態だった。まあ、シンジだけでも残されただけマシだったのであろうが。そんな自分達の状況に、冬月はため息をついていた。
「やれやれ。……レイに続いて、鈴原君まで失って、どうするつもりだ?」
「シンジが居る」
「彼だけで、ゼーレの量産機に勝てるのかね?」
「……」
仮にショックで熱を出して寝込んでいなくとも、今のシンジが、10体以上のエヴァに勝てるはずもない。仮に新しいチルドレンを選出したとしても、訓練する時間すら残されては居ないのだ。そんな自分達に、勝ち目など、あるはずもなかった。
「……」
部屋に重い沈黙が舞い降りていた。
夜。部屋で寝ているところを乱暴に揺さぶり起こされたシンジは、その相手の顔を見て心底驚いていた。
「……と、とうじ!?」
そこには、あの日、ネルフの独房から逃走したトウジの姿があった。
「久しぶりやな」
二週間ぶりに顔を見せた親友は、最後に別れた日と同じ笑みを浮かべていた。
「ワシ、腹減ってんねん。なんか食わしてくれへんか?」
そう答えるトウジは、頬がげっそりとこけていた。
「……なにしに来たの?」
そう答えるシンジの声は硬かった。
「色々と話とかなアカンことがあったんや」
微笑を浮かべて。
「多分、これが、最後になるやろうからな」
そんなトウジに、シンジは涙を浮かべて尋ねていた。
「なんで……なんで、カヲルくんを殺したんだよ!」
「それを聞きたかったら、ワシにメシ食わしてくれ」
そう答えるトウジに従わない限り、その理由なども聞かせてはもらえないのかも知れない。そうを理解して、仕方なしに起き上がり、キッチンに向かったシンジに続いて、トウジも移動していた。そして、そこでシンジが見たのは……。
「ミサトさん!」
「大丈夫。ああやって、縛ってあるだけや。怪我ひとつしてへんって」
そこには、椅子にガムテープで縛り付けられたミサトの姿があった。トウジと格闘でもしたのか、その着衣は若干乱れてはいるものの、目は、まるで相手を睨み殺そうとするかのように鋭いものだった。そんなミサトではあったが、その体の何処からも血を流していないところを見るに、確かに怪我はないらしい。それを確認して安堵した様子のシンジを横目に、トウジはミサトの横の椅子に腰掛けてシンジに声をかけていた。
「さてっと。……シンジ。悪いけど、メシ作ってくれや。もう、ワシ、はらペコペコで死にそうや」
「……はぁ。……わかったよ」
そんな異常な雰囲気の中で料理を始めたシンジを見ながら、トウジはポケットからクシャクシャになったタバコを取り出していた。キョロキョロと見渡す目に、灰皿は見えない。だが、それは当然のことだった。ミサトは日頃はタバコを吸わないし、シンジも喫煙者ではないのだから、そんなものがあるはずもなかったのだ。しかし、エビチュの空き缶だけは豊富にあったため、それを灰皿代わりに使うことにしたらしい。
「……ねえ、トウジ」
「なんや?」
「トウジって、いつからタバコ、吸うようになったの?」
「せやなぁ……いつからやったかな」
漂う紫煙を眺めながら、トウジはゆっくりと話し始めていた。
「ワシには、妹がおったんや。ナツミゆーてな」
トウジは無意識のうちに微笑を浮かべていた。
「生意気なヤツやったけど……ワシにとっては誰よりも大事な家族やった」
その微笑を浮かべた顔に、一筋の涙が伝っていた。
トウジが初めて使徒とエヴァの戦いを目撃した日。
その日が、トウジとナツミにとっての運命の日となった。
その日に人生が狂い始めたのはシンジだけではなかったのだ。
「お前が、あの使徒サキエルと戦った日のことや。ワシの妹は瓦礫の下敷きになった。……お前のエヴァが、サキエルをぶっ飛ばしたせいや。ナツミは……ワシの目の前で、瓦礫の下敷きになったんや」
自分を呼ぶ妹の声。
泣いている声。
咆哮を上げる初号機。
爆風と轟音で足がすくんで動けない自分。
飛び出してくる人影。
咄嗟のタイミングで助けられる自分。
瓦礫の中で動かなくなる人影。
その回りには、黒っぽい血が広がっていた。
そんな瀕死の妹を助けてくれたのは、それから長い付き合いになるキョウコと名乗る女性だった。
「惣流キョウコ=ツェッペリン。あの女は、そう名乗ったわ」
「キョウコさんが?」
「ワシに手を貸してくれるゆーてな」
「……どういう意味?」
「さあな。ワシにも、あの時にはよー分からんかった。でも、お前がエヴァに乗ってるゆーのは、アイツから聞いたんや。近いうちにワシのクラスに入ってくるってな。……憎かったで。ナツミを、あんな……意識のない植物状態に追いやったんは、ロボットのヘボパイロットのせいやってな。せやから、ワシは、お前を殴ったんや。理不尽なことゆっとるのは自分でも分かっとるんやけどな……でも、そうでもせんかったら、気が済まんかったんや。せやから、今でも、あの時やったことは間違ってるとは思ってへん」
その言葉にシンジは何も答えなかった。
「まあ、そこまではエエやろ。お前だけが悪いんやないしな」
「……」
「ただ、問題は、や。……ネルフのクソッタレどもが、何をしたか、や」
手の中のタバコがへし折れて指を焦がしていた。しかし、トウジは、そんなことを気にしていなかった。
「……」
「なあ、シンジ」
俯いて。泣き声のような、怒りを抑え込んでいるような。それは悲しい声だった。
「エヴァのコアって、どうやってパイロットを認識しとるか……お前、知ってるか?」
脳裏に蘇るのは、苦痛すら感じるほどの享楽を味わった日の夜のことだった。
「どうやってワシらチルドレンがエヴァにシンクロしてるか。それを……お前、知ってたか?」
トウジの脳裏で。自分の声に、死んだキョウコの声がかぶさっていた。
『フフッ。アナタ、エヴァが、どういた仕組みで動いているか……知りたい?』
久しぶりに会ったキョウコは、どういった魔法を使ったのか、ネルフの保安部に潜り込んでいた。そして、リツコの代理として、トウジのことを参号機のパイロットとしてスカウトしに来たのだ。キョウコは、そんな日の夜を、トウジと共に過ごした。町外れにある安っぽいラブホテルの一室で。そのベッドの中で体験したのは喜びと苦痛と悲しみ。そして、その日が、底なしの絶望の始まりとなった。
「そういえば、あの日からやったかな……ワシがタバコ吸うようになったんは」
キョウコは、自分の目的のためにトウジを巻き込もうとしていたのだろうか?
「あの女。ゆうとったわ。……もし、ワシに真実を知っても泣き寝入りせんだけの度胸があるのなら、それを見せてみろってな。……こんな自分を抱いてみせろって……そうワシを脅したんや。……アイツ、最初から、ワシがこんな風になるんを知ってたんかも知れんな」
その言葉に振り返ったシンジに、トウジは悲しい笑みと共に答えた。
「お前の初号機に、お前のオカンがいてるのと同じで、ワシの参号機にも……家族が入れられてたんや」
トウジの顔には笑みだけがあった。絶望に彩られた笑みだけが。
「……参号機のコアにおったんは、ナツミやった」
トウジには、ナツミの治療と引き換えにパイロットになれと言っておきながら。
「あいつら、ナツミのこと殺しただけやない」
そこにナツミが居るということが、トウジに絶望を味あわせていた。
「ナツミの魂……弄んだんや」
誰よりも守りたかった者を殺され。そして、弄ばれた。
「全部……ぜんぶ、あの女の言ったとおりやった」
その絶望だけが、トウジの命を繋いでいた。
ダミープラグによって制御を奪われた初号機に打ち倒される参号機の中で。トウジはナツミの断末魔と、バルディエルの悲鳴すらも聞いていた。何も出来ずに蹂躙され、体を引き裂かれて泣き叫ぶ妹の悲鳴と、天使の上げる悲鳴を聞いていたのだ。その時の絶望が。絶望を塗りつぶす、真っ黒な憤りと純粋な憎しみだけが、トウジを支えていた。
『ワシに……ワシの中に来い!』
どうすれば良いかは、本能が知っていた。
『ワシに……あの外道どもを殺せるだけの力を寄越せぇ!』
バルディエルを取り込み、体を作り変えられる苦しみにも耐え切った。そして、最後には、動かなくなった初号機の目の前で、参号機を使徒の力で補修さえして見せた。本来なら、使徒の力を隠しておいた方が良いに決まっているのに、残り僅かになってしまっていたナツミの魂の欠片を守り抜きたかったトウジにとっては、それを躊躇する理由はなかったのだ。
その機体は、後に参号機・改としてトウジの専用機となっていた。
シンジによって妹が重傷を負っただけなら、まだ許せていた。シェルターに避難していなかった自分達が悪かったのだと。それは、仕方なかったことなのだと、自分を納得させることが出来ていただろう。だが、妹は三度も殺されたのだ。一度目は巻き込まれて。二度目は利用されて。そして、三度目は制御を失った初号機によって。その原因を作ったのは、シンジであり、ネルフだった。
『復讐したくない?』
そして、そんな真実を知って絶望していたトウジに手を差し伸べてきたのが、キョウコだった。
「……あの日からや。ワシと……あの女の復讐が始まったんは」
握り締めた拳からポタポタと血が滴っていた。
「ワシは、なんも知らん振りを続けた。お前の親友で、仲間で。最後の最後に、あのクソ親父どもにホエ顔かかせることの出来る日まで、じっと我慢してたんや。……あの女の計画に乗ってな」
コトッと目の前に置かれたチャーハンに、トウジは目もくれなかった。
「なあ、シンジ」
「なに?」
「あの女、多分……」
「……そうだね」
多分、そういうことだったのだろう。
「シンジぃ」
「なに?」
「お前、サードインパクト起こすんか?」
「……おこさない」
「でも起きるで?知ってるやろ?お前か、ワシが居る限り初号機は使える……」
ガッ!
そう答えていたトウジの額に、真横から銃が叩きつけられた。
ガタン!
床に倒れるトウジ。
ビッ!
一瞬後、ミサトの口を覆っていたガムテープが外される。
「動くな!」
「ミサトさん!」
トウジがシンジと話をしている間に、虎視眈々とタイミングを狙っていたのだろう。そこには、片腕だけをなんとか拘束から外したミサトの姿があった。そして、その腕には、愛用の銃が握られていた。
「……な、なんや、もう外れたんか」
そう床の上で動かないトウジに銃を突きつけたまま、ミサトは荒い息をついていた。
「この化け物……」
「そぅいや、アンタ……使徒を殺したくて……ネルフに入ったんやったな」
「……そうよ」
「いろいろやったお詫びや。お前に……殺されたるわ」
そう額から血を流して口にするトウジに、ミサトは銃を突きつけたままだった。
「嬉しいやろ?自分の手で使徒を殺せる人間なんて、そうはおらんで?」
父親を殺した使徒に復讐するためにネルフへ入ったミサト。そんなミサトの前には、使徒の力をもった少年が横たわっていた。その間に不可視の壁は存在していない。今なら、自分の手で使徒を殺せる。それは、至福の瞬間であろう。だが……それでもミサトは撃たなかった。
「なにしとんねん」
「……」
なにを企んでいるの?
その目は、そんな疑いを含んでいた。だが、そんなミサトにトウジは蔑みを向けていた。
「……とっとと殺さんかい!この腐れファザコン女があ!」
一瞬で沸騰する思考。
「こんのぉおおお!」
それは、シンジが止める間もなくミサトに引き金を引かせていた。
ダム!
一発目はトウジの腹部に命中する。
「があ!」
バム!
「ぎゃあ!……はははははぁっ!その程度かあ!これくらいじゃぁ、死なんでええぇええ!ワシは、正真正銘の、化け物やからなぁあああぁぁあぁぁ!」
バム!バム!
「うわあぁぁあああああああああ!」
バム!バム!バム!バム!バム!バム!バム!バム!バム!バム!バム!
それは、憎しみの全てを叩きつけるかのように。次々と打ち銃弾を撃ち込まれ、破壊されてゆく体が、その衝撃によって小さく震えているのを朦朧となった意識の中で感じながら。……トウジは声にならない声で呟いていた。
『これで……終いや』
ミサトは知らなかった。シンジも知らなかった。キョウコという偽名を名乗っていた女性が、どれだけ爆発物に精通していたということを。そして、トウジがここに来る前に、左足の義足を、隠れ家に隠してあった特別製の品へと交換していたことも。そんなことを、知っているはずもなかったのだ。
『人のもつ感情の中で、最も強いモノって、何だか知ってる?』
消え行く意識の中で、トウジが最後に思い出していたのは、無邪気な微笑みだった。
『憎しみよ』
失われてゆく命の果てに待っているのは、安らぎだったのだろうか?
……心音停止。
ドオゴォーーーン!!
その日、ネルフのチルドレンは全員居なくなった。
それによって人類補完計画に必要とされた初号機を起動させることが出来るパイロットも事実上、居なくなっていた。
現場検証によって分かったことは、義足の中に爆発物が仕込まれていたことだけだった。
全ての役割を終えたと上位組織であるゼーレに判断された特務機関ネルフの解体と接収が国連によって決定されるのは、それから僅か七日後のことであったという。
その後の世界が、どのような歴史を歩んだかを知るものは居ない。
エチュード
〔 (フランス) étude 〕
〔勉強・練習の意〕
(1)声楽や楽器演奏の練習のためにつくられた楽曲。
練習曲。芸術的にすぐれた作品も多い。「ショパンの―」
(2)絵や彫刻などで、習作・試作。
(3)チェスの用語で芸術的なエンドゲーム(終盤戦)のことを意味する。
<おわり>